内野清香 "6つの部屋"
2009.5.9(sat) - 30(sat)
内野清香の初めての個展、『6つの部屋』は、奇妙な物語の気配に満ちている。意味のある物語なのかと思えば、頼りなくそこから逃げ去っていき、けれども、まったく霧散してしまうのかというと、そういうわけでもなく、またゆっくりと物語らしきものへの凝集が始まる。他人の夢でも見てみたい。そう語る内野の言葉通り、彼女の作品は、知人や友人など他人が見た夢を視覚化するという作業をベースにしている。もちろん視覚化といっても、内野の恣意的な判断を含まないわけにはいかないわけだから、まったくの他人の夢というわけでもない。いやそれどころか、作業の半ばにはすでに、彼や彼女のイメージは内野自身の夢でさえあるようである。夢。さまざまな出来事が渦巻く宇宙の中で、それぞれに懸命に生きている心弱い人間たちが、漆黒の闇の中で繰り返し体験し続けている脈絡のないイメージの奔流。内野の作品の前で、わたしたちはそれが実に頼りないものであるのと同時、かけがえのないものでもあることに気づかされ、そして心を打たれることになる。
会期:
2009年5月9日(土)~30日(土) 月・火曜日休み 13:00~19:00