Archive for 10月, 2006

Date: 10月 23rd, 2006
Cate: Mariko takeuchi
コメントは受け付けていません。

たどり着く家

竹内万里子

マニフェスタ6の中止については、両者の話し合いの場が法廷へと移されたということをホームページで読みましたが、その後の動きは把握できていません。で すから何かを知ったかのように話すことはもちろん許されないのですが、あえて直感的な物言いをするならば、「アート」が思い描いていた「現実」はそんなも のでない、はるかに根深い脅威なのだとということを、改めて思い知らせる出来事であったようにも思います。信じること、想像すること、問いかけること、そ うした小さな抵抗が、利用する/される以前に、その指先の一振りで吹き飛んでしまうような。

先日、戦時中の写真雑誌を少しまとめて見る機会があり、戦時色がどれほど濃くなろうともアマチュア層の投稿写真がほとんど変わることがなく奨励され続けら れていたことに今さらながら驚きを覚えました。何もなかったかのように(いや何かがあったからだということもできるかもしれませんが)、延々と繰り返され る穏やかな生活の記録や表現への憧れ。その隣には明らかにそれとわかるプロパガンダ記事が並んでいる。ここで責任の所在を云々する気はありませんが、ただ そのような行為が今日もなお表情を変えることなく続けられ、奨励され、「良いこと」とされている(もちろん経済的に社会を支えてもいる)ことに、写真をめ ぐるあらゆる問題の根深さを痛感します。基本的な構造は今も昔も変わらないわけです。

杉田さんがおっしゃるように、忍耐深くあること、忍耐深く家へたどり着くことの重要性、そして自分がその忍耐強さの一端ももち得ていないことを深く実感し ます。そうである限り、自分の言葉もまた一部の無邪気な写真たちと同じように、時代の力に加担してしまうでしょう。ただし私は、たどり着くべき家、それす らまだ手にしていないのかもしれません。

2006.10.23