Archive for 4月, 2006

Date: 4月 13th, 2006
Cate: Atushi Sugita
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向こう側から

杉田敦

前回の竹内さんの指摘を興味深く読みました。僕は最近、おそらく同じことを反対側から考えています。よく学生などから聞かされる言葉に、現代美術の難解さ というものがあります。しかし、この「難解さ」には、いくつもの問題が潜んでいるような気がしています。ひとつは、結局むしろ現代美術は、「難解さ」とし て容易に理解されるカテゴリーに堕しているという問題。そして、そうした実態と乖離した判断を下している人々が、そのこと自体を問おうとしていないという こと。またもう1つは、そう口にする人たちが必ず付け加える、「誰にもわかるものを」という基準に忍び込んでいる、奇妙な多数性。結局、1人の判断では持 ちこたえられずに、暗黙のうちに自身と同様に判断している多数の人を捏造してしまっているという問題。この最後の部分は、竹内さんの指摘と、表裏をなして いるようにも思えます。独りよがりな独断性とともに、ある種の共同意識を捏造してしまうという脆弱性。この二面性があるのかもしれません。現代の表現に対 して繰り返し用いられてきた難解さという便利なレッテルが、もしも同時にそうした虚偽に満ちた共通意識の捏造に加担しているのであれば、それこそ現代美術 はまさに、そうしたレッテルを拭い去る努力をすべきです。けれども、だとすればこそ、それは「誰にもわかるもの」や「誰にも親しめるもの」という安易な分 枝に向かうことではないはずです。

2006.04.13