Date: 8月 17th, 2006
Cate: Atushi Sugita
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自省を忘れて

杉田敦

時間が空いてしまいました。本当は、すぐに返答しようと思っていたのですが、いろいろな理由でそれができないうちに、時間ばかりが過ぎてしまいました。し かし、時間が経ってみてから考えると、あのときすぐに返事しなくてよかったと思えるところもあります。だらだら過ごしていても、何かを学んでいるというこ となのかな?

年末に出かけようと思っていたManifesta 6が中止になりました。美術学校という形態で行われるということ、それと最後の分断都市であるニコシア開催ということで期待が大きくなっていただけに残念 です。最初聞いたときは、レバノン空爆が原因だと思ったのですがそうではなかったようです。ドクメンタ11で、ワリッド・ラードというレバノン出身のアー ティストが、架空の資料でレバノン内戦の悲惨さと、メディアや歴史というものの欺瞞性を同時に暴いて見せたその場所で、空爆がつい先日まで続いていまし た。こうしたアクチュアルな問題を目の当たりにすると、PCという姿勢を様式としてではなく実践として身につけようとしていた現代美術も無力感に包まれざ るをえません。けれども、もちろん大切なのは、その無力感に包まれ続けることではないはずです。たとえそれが正確な分析や判断によるものであっても、それ でもそこから一歩も二歩も踏み出すべきであるはずです。

1日早く帰国したおかげで、テロによる空路の乱れに巻き込まれることはありませんでした。9.11の1年後、エール・フランスの乗務員がストを決 行し、何にも知らずに飲んだくれていたため、空港で酷い目にあったことが思い出されます。今回の空港の混乱を伝えるニュースに登場するうんざりした旅行者 の表情には同情とともに共感を覚えます。すべてを投げ出してしまいたくなっているはずです。それでも、彼らは忍耐強くそこで最善の道を探し、そしてやがて 家に辿り着くはずです。彼や彼女が行っている忍耐や努力を、自身を含めてなんらかのかたちで表現する人間は見習うべきなのでしょう。無力感に包まれている ことが、どれだけ怠惰なことなのか、うんざりする旅行者たちの表情は教えてくれているような気がします。

いずれにしても行動すること、ということでしょうか。といっても、これだけ時間を空けてしまっておいて、言える言葉ではないのですが……。自省を忘れて、書き記します。

2006.08.17